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その原価は他社よりもまだ2割高い

 
先日、建築会社6社が一同に会し原価検討会が開催されました。昨今の資材高騰、及び利益率減少に歯止めをかけるべく、普段は絶対にオープンにしない各社の原価を一斉に開示、比較検討したのです。

手始めに今回検証したのは木造の障がい者グループホームの規格商品で、規模は1棟あたり10室、延床65坪。あらかじめ積算図面とフォーマットを統一し、当日突き合わせた形です。

結果は、以下の通りでした。
障がい者グループホームの建築に取り組んでいる建築会社様もぜひ参考にしていただければと思います。

【障がい者グループホームの原価(税込)※外構は含めず】 ※カッコは1位との金額差
1位 A社 ¥29,875,000(―)
2位 B社 ¥30,786,411(1位との差 ¥911,411)
3位 C社 ¥35,600,310(1位との差 ¥5,725,310)
4位 D社 ¥36,228,900(1位との差 ¥6,353,900)
5位 E社 ¥36,463,845(1位との差 ¥6,588,845)
6位 F社 ¥36,899,778(1位との差 ¥7,024,778)

ご覧のとおり、もっと安かったA社と最も高かったF社の金額差は¥7,024,778にもなりました。つまりF社はA社よりも23%も原価が高かったのです。

また、2位のB社は¥911,411の差でしたが、これは1位と同グループと言ってもいいでしょう。しかしながら3~5位は¥5,725,310、¥6,353,900、¥6,588,845とどんぐりの背比べ状態で、いずれも1位とは20%程度高い結果となりました。

ちなみに、仮に障がい者グループホームの売価を¥50,000,000で統一した場合の粗利率は、以下のようになります。やはり、1位と3位以下の差は、歴然としています。

【障がい者グループホームの原価と粗利率 ※外構は含めず】 ※カッコは売価5,000万円
1位 A社 ¥29,875,000(売価¥50,000,000の場合、粗利率40.3%)
2位 B社 ¥30,786,411(売価¥50,000,000の場合、粗利率38.4%)
3位 C社 ¥35,600,310(売価¥50,000,000の場合、粗利率28.8%)
4位 D社 ¥36,228,900(売価¥50,000,000の場合、粗利率27.5%)
5位 E社 ¥36,463,845(売価¥50,000,000の場合、粗利率27.1%)
6位 F社 ¥36,899,778(売価¥50,000,000の場合粗利率26.2%)

では、いったい何が高かったのでしょうか?60の工種のうち、特に金額差が大きかったのは以下の工種となりました。
 
サッシ           (1位との差 ¥1,380,000)
外壁工事          (1位との差 ¥1,040,000) 
電気・消防関連工事     (1位との差 ¥2,227,800)
給排水設備工事       (1位との差 ¥1,180,000)
キッチン          (1位との差)¥620,000)

この他にも、ユニットバス、洗面化粧台、便器、エアコン手間、構造金物など¥200,000~¥500,000の差があるものがゴロゴロ…。これらが積み上がることで各社の原価が高騰し、1位との間に大きな差を生んでしまっていたのです。

さて、今回浮き彫りになったことはこのような金額差だけではありませんでした。それは、「経営者が協力会社から上がってくる見積もりの根拠を把握していない」ということでした。これはよくよく考えると恐ろしいことです。なぜなら、(大変耳の痛いお話ですが)経営者・あるいは工務が見積もりの高い安いの根拠を把握せずに値下げ要求をしている、あるいはその逆で、安易に値上げに応じてしまっている可能性があるからです。

実際に原価検討会では、
・自社が他社よりも高い理由を明確に説明できない
逆に、
・自社が他社よりも安い理由を明確に説明できない

といった場面が幾度となく訪れました。皆様の会社はいかがでしょうか。

今回ご協力いただいた6社様のうち、下位4社については、ある意味ではショッキングな日だったと思います。しかし自社の正しい現状を知らずに正しい努力もできません。今回1位2位だった会社様も、あくまで6社中の1位2位です。上を目指せばキリはなく、この努力に終わりは無いと言えます。

次回の原価検討会では、障がい者グループホームだけでなく老人ホームも加えます。かつ、メーカーの掛け率や発注方法の違い、仕入れ単価などをより厳密に比較することで、各社のコストダウンにつながる情報網とノウハウをシェアしていきます。

困難な時代にこそ情報共有を密に打ち勝ちたいですね。