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2021年障害福祉報酬改定を船井総研コンサルがポイント解説!

 

障害福祉や高齢者福祉は国の保険事業でもあるため
3か年計画があり、2021年4月から新たな計画が始まります。

今回のコラムでは、私たちが普段密接に関わる、
障がい者グループホームと就労支援事業の報酬改定についてお伝えいたします。

2021年2月4日におおよその方向性が厚労省の
障害福祉サービス等報酬改定検討チームから発表されました。
全体の改定率は+0.56%。


(出典:厚労省HP障害福祉サービス等報酬改定検討チームより)

まず、この3か年計画で大事にしていただきたいこととして

1.良い風に書かれている言葉尻の表現をしっかりと把握しておくこと
2.単位数の増減ではなく、国の“方針”改定に順応すること
3.ベンチマークでもある高齢者介護の流れを思い返しつつ、障害福祉改定を読み解くこと

上記3点について、詳細に解説していきたいと思います。

1.良い風に書かれている言葉尻の表現をしっかりと把握しておくこと

まず、報酬改定の内容を把握するために、お家芸?とも言うべき
言葉の表現について把握をしていただきたいと思います。

代表例として

①メリハリ ⇒ 報酬を細分化し、上手に分配する
②適正化 ⇒ 現状悪い部分を最適な単位数になるように修正する
③効率化 ⇒ バランスを調整して費用を抑制する
④重点化 ⇒ 軽度の人には使わせないようにする

若干表現がキツめかもしれませんが、今後完成版が発表された際にも
これらの言葉の表現を言い換えながら文章を読み解いていただきたいと思います。

2.単位数の増減ではなく、国の“方針”改定に順応すること

3か年に1度の改訂ということで、皆様の事業に関わる報酬単位数の
増減が最も気になる点かと思います。
しかし、その増減数字について一喜一憂するのではなく、
長期目線で考えてください。

今回の報酬改定での大きなポイントは「重度化・高齢化」になります。
後述しますが、単位数の増減具合で“報酬”改定ではなく国の“方針”改定を
読み解くことが今後も生き残る事業作りに大事なことになります。

特に今回の報酬改定によって、障がい者グループホームに影響があるのは
・夜間支援等体制加算の見直し
になります。

「メリハリ」のある加算に見直した上で・・・
ということで、どのようになったかと申し上げますと
これまで、頻繁に取得していた夜間支援等体制加算(Ⅰ)の
利用者8人~10人の149単位が、細分化され、区分に応じた単価設定になりました。

例えば、利用者8人~10人の単位については
8人/9人/10人となり、ここに掛け算で区分4以上/区分3/区分2以下の
3区分によって単位が別個で設定されました。

利用者9人の場合、報酬改定以前と比較も含めると
区分4以上:149単位 (±0%)
区分3:124単位 (-17%)
区分2以下:99単位 (-34%)

これまで区分の低い利用者であれば、-34%の減算になります。
全体の改定率が+0.56%の中で、大幅な改定率になります。

元々の149単位で計算していた事業者の方々は大きな痛手です。
基本報酬や加算部分の中でも特に、夜間支援等体制加算が特に収支差率が
高かったのではないかと予想できます。

エリアにより差はあるので一概には言えませんが
私の概算では、以前の夜間支援等体制加算での、
加算報酬額に対する人件費率は約65%でした。つまり収支としては35%になります。

今回の改正によって、同じ人員と人件費で運営を行った場合
約85%の人件費率になりますので、収支としては15%となります。

特に収支が出ている箇所にメスを入れてくるのは
常套手段でもありますし、当然のことかと思いますので、仕方ありません。

もう1点、日中サービス支援型の基本報酬が見直しされました。

(出典:令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(案)より)

「日中サービス支援型グループホーム」の基本報酬について、重度障害者の受入れのインセンティブが働くようメリハリのある報酬体系に見直し。
(例)日中サービス支援型共同生活援助サービス費(Ⅰ)
【現行】区分6:1,104単位/日、区分5:988単位/日、区分4:906単位/日、区分3:721単位/日
【見直し後】区分6:1,105単位/日、区分5:989単位/日、区分4:907単位/日、区分3:650単位/日

そのまま、抜粋しましたが
区分3のみが71単位(約-10%)の大幅な減算となりました。

つまり、「重度化」対応するよう区分3の単位を減らすことにより
事業者側の心理としては、区分3は経営上敬遠せざるを得なくなるかもしれません。
となると、必然的に区分4以上のご利用者を日中サービス支援型のメイン利用者と
することが、単位数によって暗に伝えられています。

これまでは、包括型(夜間加算加味)と比較しても内部利用の場合で
下記表の内部利用の区分3での単位差が104単位でしたが、
今回の改定により、包括型での区分3の単位との差が減りました。

包括型と日中サービス支援型でも受け入れが可能だった
中間の区分3については、包括型で受け入れ、区分4以上のご利用者は
日中サービス支援型で受け入れていくことが予想できます。
より、包括型=軽度者向け、日中サービス支援型=重度向け
の色が濃く出てきた改定であると感じます。

夜間支援等体制加算も日中サービス支援型の基本報酬の見直しも
より区分4以上のご利用者を対応した場合に現状維持またはプラス評価と
なっているため、国の“方針”として「重度化・高齢化」に対応することが
国の保険を活用した事業を営んでいる以上、生き残る術になります。

3.ベンチマークでもある高齢者介護の流れを思い返しつつ、障害福祉改定を読み解くこと

2015年の高齢者介護の報酬改定によって、国の方針改定に適応できず
翌年以降、介護事業者の倒産件数は過去最大を更新する事態となりました。
(2020年も118件と過去最高を更新)

私は2015年や2018年の介護報酬改定のタイミングで
「プラス改定に見えても、マイナス改定が基本線で、
いかにして加算取得できるかが生き残りのポイントになる。」
とお伝えしてきました。

増え続ける「給付費」
・給付費を使いたい利用者
・給付費を使いたい事業者

抑えたい「財源」
・給付費を抑えたい財務・厚生省
・給付費(税財源・保険料負担)を抑えたい財界

お金を使うなら「効果」を
お金を使うなら「根拠」を

という考え方の基、訪問介護・通所介護の基本報酬の減額
通所介護にインセンティブ制度の導入
が2018年から始まりました。

今回の障害福祉の改定は、2012年の地域包括ケアの
重度対応に向けた体制の整備の辺りに似ているのかなと思います。

2012年の“方針”改定を読み解き、2015年や2018年に向けた
準備を整えられていたか否かが介護事業の生き残りの分かれ道でした。

基本報酬が上がることはあまり期待できないため
方針に沿った加算を取得することで現状の水準は維持できるかと思います。

短期的に今回の減算を切り抜けるためには
医療連携体制加算(Ⅶ)を取得することで
一旦は改定前の水準の収支にはなるかと思います。
※条件等異なる前提ですが。

長期的目線では、高齢者介護と同様に小さく運営している事業者は
明らかに厳しくなると予想します。
先述の倒産事業者も家族経営など少人数事業者の倒産が圧倒的に多いです。

事業拡大しスケールメリットを享受しつつ
現状軽度向け利用者のみのサービスであれば、重度利用者の受け入れや
高齢化に対応するためにも、例えばグループホームでも無資格者の
スタッフだけではなく、福祉専門職員配置等加算や看護職員配置加算などを
取得を目指し、介護・医療サービスの充実を目指していく。

この方向を目指し事業を展開していくことが
将来に渡って生き残る障害福祉事業者となる方法だと思います。

さいごに

いきなり全てを取り組むのはまず無理ですし失敗します。

各社様のポテンシャルも異なれば、
地域密着が大前提の事業になりますので、地域ニーズもあります。
ただ、常に自社はどの立ち位置で、ご利用者やその親御さん、
強いて言えば行政は何を考えているのか?

私がご支援させていただいている地域の行政からは
圧倒的に、包括型グループホームよりも日中サービス支援型グループホームが
足らないから作ってほしいというお声をいただきます。

経営者が進みたい方向ではなく
皆様の地域は何を求めどの方向に進みそうでしょうか?

一旦、俯瞰的に自社を見つめ直してみてください。